大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

名古屋家庭裁判所岡崎支部 平成12年(少)1220号

主文

少年を中等少年院に送致する。

理由

(非行事実)

少年は、当時暴走族○○の総長であったが、○○の構成員A(当時15歳)、B(当時15歳)と共謀の上

第1  平成12年8月19日午後9時30分ころ、愛知県豊田市○△町○□××番地×の□□東側路上において、ヘルメットを着用せずに原動機付自転車を運転していたC(当時18歳)を認めるや、制裁を加えようと考えて、交互に「何でノーヘルなんだ。誰に断って走っている。何様のつもりだ」等と語気荒く言って、Cの顔面、頭部等を手挙で数回殴打し、左大腿部を数回足蹴りするなどの暴行を加えた。その結果、Cに対し、安静加療約10日間を要する頭部顔面外傷、顔面裂傷、皮下血腫、四肢打撲傷の傷害を負わせた。

第2  上記日時場所において、C所有にかかる原動機付自転車(登録番号豊田市や××××号、時価5万円相当)を窃取した。

(法令の適用)

第1  刑法60条、204条

第2  刑法60条、235条

(処遇の理由)

本件は、当時暴走族○○の総長であった少年が、自分たちが暴走行為を繰り返す地域内において自分たちだけがヘルメットを着用せずに原動機付自転車に乗車することが許され、他の者は許されないと考えて被害者に制裁を加えた事案等である。

少年は、暴走族の総長として率先して被害者に因縁を付けてヘルメットを着用していないことを非難し、足蹴りを加え、顔面を殴りつけるなどの暴行を加え、暴走族の構成員である共犯少年に被害者を離れた場所に連れてくるように指示した。少年は高校時代に空手を習っており、粗暴行為に及べばさらに重大な結果が発生する可能性があった。したがって、非行態様は相当悪質である。

少年は、以前に本件同様にいわゆる「ノーヘル狩り」を行っていることからすると、社会規範よりも暴走族の内部の行動様式を優先させ即座に行動に移してしまう自己中心的な性格である。少年は被害者が即座に謝罪しないことに立腹して本件非行に及んでおり、少年はささいなことに立腹し粗暴行為に及ぶ傾向が認められる。

被害者は、示談は成立しているものの、安静加療約10日間を要する傷害を負い、顔面外傷により口の右側が腫れ上がるなどしたばかりか、原動機付自転車を奪われ、肉体的精神的打撃を被った。

少年は、中学校は特段の問題行動もなく卒業し、高等学校に入学後もしばらくは落ち着いた生活を送っていたが、平成11年5月ころに運転免許を受けることなく、自動二輪車を購入し、同年8月には暴走族の集会に参加し、9月ころには暴走族○○に加入した。9月には無免許で自動二輪車を持ち運んでいたため補導され、保護者が自動二輪車を処分した。

しかし、少年は同年10月ころには○○の総長に就任し、総長が着用する特別な特攻服を購入した。その間、保護者に対しては暴走族に加入していないと虚偽の言い訳をしていた。

これに対して、少年の保護者は平成12年4月ころには、少年の行動に不信を抱き、少年が特攻服を着用して暴走族の集会に参加している現場に赴き、暴走族からの離脱を強く説得し、背後の暴力団構成員と交渉して、離脱を約束させた。保護者は、その後しばらく少年を愛知県△△市内の伯母方で生活させ、暴走族離脱を図った。

ところが、少年は6月ころから、暴走族の集会に参加するようになり、再び総長が着用する特別な特攻服を購入し、保護者には暴走族は離脱した等と虚偽の報告をしつつ、暴走族の総長として活動を継続し、暴走族の後ろ盾となっている暴力団構成員に○○構成員から集金した現金を納めるなどした。

以上のように、少年の保護者は暴走族離脱に向けて次々と強力な手段を講じているが、少年はそれを全く意に介することなく暴走族に強く親和し、暴走族の総長として活動を継続した。

したがって、少年にこれまで保護処分歴が無く、保護者が伯母方で再び生活させて暴走族構成員との交友を断ち切る準備を整えていることを考慮しても、非行事実の悪質性やこれまで少年が保護者の指導に従う姿勢を示してこなかったことからすると、施設内に収容して強力な働きかけを行い、これまで反社会的集団に所属してきたことを内省させる必要がある。もっとも、少年は暴走族としての活動以外では非行性を深化させておらず、観護措置に付され更生意欲を高めており、早期改善の可能性が大きい。そこで、短期間の継続的、集中的な指導と訓練により、その矯正と社会復帰を期待できると考え、特修短期処遇の処遇勧告を付することとした。

よって、少年法24条1項3号、少年審判規則37条1項を適用して、主文のとおり決定する。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!